匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
通報 |
…ああ。勿論好きなだけ読むが良いぞ
(私にも読ませて、なんて言われて断るのも怪しまれるために素直に頷く。先程の頁を見られたら実に都合が悪い。後で筆で消しておこう。隠蔽工作の段取りを考えていると彼女が髪を結ぶ光景が目に入った。瞬間、イナリの身体は金縛りに遭ったように動けなくなった。長く艶やかな黒髪も着物と合っていたが、団子状にまとめられた髪型もよく似合っていた。美しい──彼女の着物姿を見た時に思ったことを再び今度は強く感じた。イナリは女子の髪型なんて気にしたことがなかった。そもそも人間の容姿なんて何でも良いと思っていた。しかし彼女を見ていると容姿を気にしてしまう。何故だ。イナリにもようやく人間のような美的な感覚が備わって来たのだろうか。それにしては違和感がある感情が胸に生まれる。ハッと我に返るといつまでも彼女を見つめている訳にもいかないので、硬直を誤魔化すように告げる)
…社務所に参るぞ
(一言だけ告げるとスタスタと社務所へ向かう。やはり妖とはいえ睡眠は取るべきなのだろうか。人間を美しいなどと自分は寝不足故に疲れているのかもしれない。そんなことを思いながら社務所の扉を開けると、我ながら綺麗に整頓できたと鼻を鳴らす。こんなに広かったのか。土間の台所まで余裕を持って歩いて行かれるようになったおかげで無駄に妖術を使わずに済む)
トピック検索 |