匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
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(彼女が社務所を後にするとガラクタの山を見て大きく溜息を吐く。自分はこの山を妖術などを使って越えていたから問題なかったが、彼女に指摘されると確かに些か多すぎる。普段なら妖術を用いて一瞬で、この山を消すことが出来るのだがイナリには彼女の言葉が気になっていた。面白いものがたくさんあってつい──イナリにしてみればここにあるものなど取るに足らないものばかりだが、彼女は興味津々という様子だった。自分の所有物はもう誰の目にも止まらず朽ちていくとばかり思っていたから、イナリもそのつもりでここに放っておいたので、彼女の言葉は実は嬉しかった。彼女がこの神社から居なくなる時、ここで見たもの聞いたものを外で後世まで伝えてくれるだろうか。そんな淡い期待を抱いてしまうと身体は勝手に散乱した資料を掻き集めていた。村人の日記、武将の将軍への報告書、戦地へ行く者の最期の恋文。そしてイナリの日記など。数々の資料を掻き集めると丁寧に積み重ね、何個かの山にする。今度は倒れてもすぐに修復できる程度の大きさに。彼女が手にしていた冊子は懐に仕舞う。きっと持っていれば役に立つから。残りの物は全て残しておけないから選別する必要がある。ふと外に出てみると東の空が白み始めていた。久しぶりに徹夜をした。イナリは二日三日眠らなくても問題ないが、やることがないのでいつも人間と同じように眠る。何だか普段と違うことをして新鮮で少し気分が良い。社務所に戻るとガラクタを山を漁り、彼女が興味を惹かれそうなものを選別する。そうして作業を終わらせると、要らない物は妖術で一瞬で消してしまった。すっかり綺麗になり足の踏み場が十分にある社務所を見て満足そうに頷くと外へ出て本殿へ。既に太陽は昇っていた。彼女を一瞥すると枕元に置いてある手帳のようなものが気になったが、勝手に触ると顰蹙を買うと思い、彼女が起きるまでは何もしないでおく。その内起きるだろうと、社務所から持ってきた冊子を取り出して読み返す)
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