匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
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……なんだ、起きていたのか。丁度良い。粥を作ってやった。少しだけでも腹に入れろ。
(諸々の準備などを終えて茶碗と箸片手に戻ってくると彼女の顔を覗いて起きていることを確認する。まだ意識がはっきりしていないのだろう。瞳に憂いが感じられなかった。とりあえず何か食べさせなければならない。自力で起きて貰うのも気が引けたので、頭の後ろに手を回すと、そのまま上体を起こさせる。手で背中を支えながら茶碗と箸を彼女の前に差し出す。が、すぐに引っ込める。よく考えてみれば彼女が意識がはっきりとしていない。そんな彼女に渡して万が一零されれば大変だ。布団を汚されれば、洗濯をするとしても新しい布団が必要になる。そのためには人里に降りなけれなならない。イナリは人間は好きだが人里に降りるのは好きではなかった。完全な人間への変化は意外と疲れるものだし、何よりイナリは現代的なものに疎かった。車に驚き信号機に驚き、挙句にはスマホに驚いた。イナリが人里に降りる度に人間たちの社会には常に新しいものが取っかえ引っ変えと供給される。
「ふー…ふー…食えそうなら食え」と箸で粥を掴むと何回か息を吹いて冷まし、彼女の口の前に持っていく)
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