匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
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(荒れた心で社務所に入ると物の多さに目を剥く。神社が建設された当初は社務所にも神主がいて巫女がいた。だが時代と共になり手がいなくなり、ただでさえ神社の周辺の集落は規模が大きくなかったので昭和が訪れた頃には既に神社には人はいなかった。仕方がないからそれ以来、土間の台所周辺を覗いて物置のようになっている。本殿の木箱とは違いガラクタばかりだ。そのガラクタを暫時漁ると、ようやく目当ての薬研が見つかった。薬研を抱えたまま、神社裏の森に入ると手早く薬草を摘んで本殿へと戻ってくる。
戻ってみると彼女は既に眠っていた。何となく気になって寝顔を覗き込む。がどこか苦しそうな顔をしていた。寝苦しいのか。思えば可哀想な人間である。真面目が取り柄なのであろうが、その取り柄で自らの首を絞めているのだから。この弱者をいつまでも手元に置いておくつもりは無い。だがこのまま帰すつもりもない)
…この上位存在たる我が、お主を社会で生きやすいよう改造してやろう。感謝するが良い。脆く弱い日向静蘭よ。
(上から目線で小さく呟くと彼女の頬をつぅーと指でなぞる。やはり発熱があるので熱かったが柔らかさの方が印象に残った。ふっと笑うと少し距離を取って薬研に薬草を入れ、細かく挽き始める。時折眠っている彼女の方を見ながら、食事はどうしようかなんて考え始める。「全く何の道理あって我が人間の世話なんぞ…」などと呟いたイナリの心中には密かに充実感があったが、イナリはまだ自覚していない)
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