匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
通報 |
……!
(ようやく聞こえてきた彼女の言葉に返答をしようとするが、様子がおかしいことに気付いた。声が震え、彼女は泣いていた。イナリは涙が嫌いだった。人間は何かにつけてすぐに泣く。泣いていても始まらないのに。全く鬱陶しかった。だが彼女の涙は少し訳が違う。何故かはイナリにも分からないが、彼女の涙を見ているとイナリまでも苦しくなってくる。泣くな。我の体調がおかしくなる。そう言いたかったが、口が言うことを聞かない。この人間は先程からイナリを苦しめるが、本当にただの人間だろうか。まさか超自然的な力を持った存在では無いのか。なんて疑念を抱いてしまう)
……我には愛の何たるかは分からん。我は誰かを愛したことがない。故にお主の願いを真に叶えられたかも分からん。
(微笑みを向けられると、暫時逡巡した後に正直に打ち明ける。彼女の涙と微笑みは紛れもなく真実なのに、自分だけが隠し事をしているのは気分が良くない。何だか気まずくなって、そそくさと本殿の中に入っていく。彼女も後から入ってくるだろうからと無意識に閉めなかった。本来本殿の中に人間を招くのは良くないが、社の主が気にしていない以上は問題ないだろう)
トピック検索 |