匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
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………。
(“愛”なんていう抽象的で曖昧な願いなど、きっと彼も困惑するし叶えようが無いはずだし、また「気にしないで」と簡単に流すつもりだった。それなのに、ぼんやりと彼の動きを目で追っていると、落ち着くような草木の香りを感じ、いつの間にかその腕の中に包まれていた。
直ぐには状況が理解出来ずそのまま固まっていたが、段々と伝わってくる相手の体温と鼓動の音に、つられるようにして鼓動も体温も上昇していくような感覚になる。
出会ったばかりの自分に愛情なんてきっとある訳ではないし、彼にあるのは同情心や責務感なのだろうと分かりきっているはずなのに、それでも、今1番欲しい温もりをくれるものだから…。またも不敬な事をしてしまうな、なんて考えるが、その手はゆっくり相手の背に控えめに添えられていて、思わず彼の肩に縋るように顔を埋めた。)
…イナリ様は、大変ね。
こんな、願いも…叶えなければいけないなんて。
( ゆっくりゆっくりと言葉を発するが、その声は段々と震えを含ませ、その目からは静かに涙が流れる。自分の願いを運良く叶えて貰えただけなのに、早く離れなければいけないのに、その温もりがあまりにも暖かくて嬉しくて、離れたくなくて…また、そんな事を思う自分が浅はかで情けなくて、涙が溢れてくる。
最後に少しだけぎゅと力を入れて抱き返すと、直ぐに相手を解放し、「…ありがとう」と涙を拭いながら優しく微笑みを向けた。)
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