匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
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さしもの我も大勢の記憶を一挙に操ることはできん。じゃが安心せい。人間ごときの記憶力なぞ長くは持たん。お主はすぐに忘れられる
(少なからず本心を含んだ言葉を紡ぐ。イナリは人間の記憶力の無さが嫌いだった。また来るね、などといった童は二度と現れることは無かったし、願いが成就したのでイナリに恩返しをすると誓った夫婦は恩を返す前に引っ越した。この弱者は、誰からも忘れられ孤独の時を過ごすことの辛さを理解しているのだろうか。彼女に視線を移した時、彼女がずぶ濡れであることに初めて気が付いた。イナリは妖術で雨に濡れないようにできるが、人間が妖術を持っていないことをすっかり失念していた。寒さに震えている女子を放置して愉しむ嗜好はない。ふん、と鼻を鳴らすと一言告げるでもなく、本殿の中へと入っていく。古びた本殿の中にある一際綺麗な木箱を開け、中を検める。かつての人間たちがイナリへ供物として捧げた物の数々を今もこうして保管している。木箱を検めること数分、ようやく目当てのものが出てきた。それを持って彼女の元へと戻る)
身体を拭き、衣を替えるが良い。我が小袖を恵んでやるでな。感謝せい。
(そう言って布と女物の小袖を差し出す。江戸の時代、イナリの元へ供物として着物を捧げた奇特者がいた。油揚げの方が良かったし、何故女物を寄越すのかと理解できなかったが、賊に盗られるのも捨てるのも嫌だったので、そのまま取っておいた。まさかこんなところで役に立つとは。本殿の中を顎で示し、中で着替えるように促す)
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