匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
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(彼女が追い付くと小さく頷いて歩みを進める。今までは自分一人で歩いていた道も隣に彼女がいると、また違った景色が見えてくるようだった。女子と肩を並べて歩くのは百年ぶりだろうか。女子でなくても人間と歩くのは本当に久方ぶりだった。だからイナリはこういう時、どういう話しをすれば良いのか分からない。百年前であったら雑談も問題なく出来ていただろうが、今となっては雑談のやり方すら忘れてしまった。ましてや横に歩いているのはイナリを惑わす魔女のような人間だ。どう接すれば良いのか。僅かに気まずさを感じていた時、彼女が口を開いた)
うん? 洋服? …構わんぞ。好きなだけ買うと良い。お主がどのような衣を好むのか興味があるでな。
(イナリは現代人のあれこれについて全く知らなかった。街へ買い出しに行っても現代人の服装は目には入るが、いまいちよく分からない。それに、一々服装に気を配る余裕もない。イナリにとって街への買い出しは、平和な世での唯一の乱世であり、自分の正体が露見するかもしれない危険な行為なのである。だから彼女のような現代に生きる女子がどのような服を好むのか知りたい。"幽霊の正体見たり枯尾花"という言葉があるが、いい加減に現代人や現代の技術に驚くのは辞めたい。だから現代人をよく知ることで恐怖心を無くそうとしたかった。いくらでも買っていいという気前のいい発言には、そういう裏が隠されているのだった)
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