匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
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(本殿に着くや否や、壁に背をくっ付けて縮こまったまま座り込む。髪留めやヘアゴムを外して肩から垂らした黒髪を撫で付けながら気持ちを落ち着かせ、なぜ自分がショックを受けたのか自問自答を繰り返す。自ら愛されることを諦め、孤独でいる道を望んでいた。いっその事みんなが自分の事を忘れてしまえばいいのにと思っていたはずなのに。
受け取ったまま持ってきていたスマホの画面をもう一度開き、そこに映っていたかつての同級生達の後ろ姿を眺めた。そして深い溜息をつくと、昔の思い出に蓋をするように手帳型のケースを閉じた。
自分は何一つ、諦められていなかったのだと気付かされる。心の奥底で、いつか誰かに認められて愛されるのではないかと淡い期待を秘めていたのだ。だからこそ、その期待が報われることは無いと知ってショックを受けたのだ。そして何より、勝手に期待して勝手に失望している自分が情けない。全て、自分の所為なのに。
…未だ哀しい事には変わりないが、涙を流したりすることは無かった。自分の中で気持ちを整理することで幾らか落ち着いたし、哀しんだところで何も変わらない。少なくとも、先程言ったように周りから見えないことで助かることも事実だし、単純に彼と出掛けるのも少し楽しみだし。いつまでもウジウジと済んだ事を嘆いても時間の無駄だと自分を奮い立たせる。
「大丈夫よ」そう自分に向けて呟くと、ゆっくりと立ち上がる。何やら帯を解き始めたかと思うと、彼が覗いているとも知らずにそのまま小袖を脱ぎ出す。彼が気を使ってくれたのか、雨で濡れていたはずの衣服も綺麗にされていた事だし、見えないとはいえ外に出るならば現代の衣服に着替えようと思ったらしい。)
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