匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
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(目を覚ますと既に夜は明けていた。だが外は雨模様。空には厚く黒い雲が伸し掛っていた。社の中から外を一瞥すると、溜息を一つ。この古びた社を塒とする九尾の狐ことイナリは、このような曇天が嫌いだった。晴天とも雨天とも言えない優柔不断な天気。イナリは迷いが嫌いだった。不完全で弱い人間ならまだしも、全てを統べる存在である筈の自然が何を迷うことがあるのか。さしものイナリも自然に干渉する力は無い。たった五百年生きているだけの妖狐に過ぎない)ヘンゲン…(静かに呟くと、あっという間に身体が狐の耳と九つの尻尾を残して、人間の姿へと変わる。着物を羽織ると屋根の上に出現する。その場で胡座をかくと大きな欠伸を一つ。また今日も退屈な一日が始まる。目的もなく時間を浪費するだけの一日。イナリのような存在が「迷信」として形骸化された今となっては、この古びた社を訪れる奇特な者もいないだろう。そう自嘲気味に鼻を鳴らした刹那、空から大粒の雨が降ってきた。程なくして篠突く雨になるだろう。そして雨と同時にイナリの耳が気配を捉えた。幾年ぶりかの人間の気配__)
(/ とりあえずは置いておきます!何かありましたら気軽にご相談ください!)
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