2024-01-04 23:14:52 |
通報 |
1
(思えば、致命的なズレを見つけたのはきっと最初からだった。宝石が放つ光とは裏腹に、不釣り合いに刻み込まれた黒々とした傷。なんだか汚らしく思えて、目を引く鮮烈な色のリボンと豪奢な金具で見えなくした。アクセサリーは飛ぶように売れた。あの手この手で皆欲しがって人が群がった。頬を染めて笑う人々と溢れ出る模造品に弾ける眩暈がした。見下ろしていたから、悪い気分じゃなかった。ある時、隠した傷を前面に押し出すデザインを思いついた。目を焼く色を目を癒す色のリボンに変えてシンプルな金具で控えめに飾った。翌日、以前売り出した華やかなアクセサリーが店の前で捨てられていた。人々はそれに倣って次々と捨てていった。その中に、模造品も混じっていた。看板に書かれていたのは下卑た装飾屋の落書き。見上げていたからか、動揺で胸が苦しくなった。模造品ごと装飾を拾い集め、作業台の上に全てばら撒いた。新しく売り出したアクセサリーが人の目に留まることは無かった。)
トピック検索 |