通りすがりさん 2023-12-27 11:12:37 |
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【薫・クリフォード】
─いいや、構わないよ。
(「彼」は電話越しに聞こえてくる、甘えるような"お姫様"の声に口元を柔らかく緩める。未だにゴロゴロと窓の外で低く唸る雷鳴を、少しでも誤魔化すようにカーテンをさっと閉め、手元にあった文庫本を本棚へと戻した。そうして─とびきりの甘い声で囁いて)
…丁度、僕もキミの声が聞きたかったところだ。
【葵依】
…ふふ…本当に可愛いねえ、お嬢さんは。
(顔を赤くしたままそっぽを向いてしまう彼女に向けて、彼は心底愛おしそうな声色でくすくすと笑った。右腕を彼女の頭から降ろし、緩んでいた包帯を引いてきつく締め直す。─腕を抑え付ける少しばかりの痛みに形の良い眉が顰まるものの、それも一瞬。ふと─ざわざわ、と木立が揺れ、狐の面を付けた小紋姿の小柄な少女─彼の"侍女"が姿を見せた。小紋姿の少女はぺこり、と眼の前の彼女に頭を下げ、彼が脱ぎ落とした羽織を拾い、小さな手で再び羽織らせて)
─嗚呼…有り難う、小町。
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