通りすがりさん 2023-12-27 11:12:37 |
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【 妃 硝華 】
( どんどんと大きくなる雷鳴に、愛犬とひとつになるのではないかという程にお互い身を寄せる。だがそんな時でも頭の中に浮かぶのは自分の王子様の顔で、硝華は震える手でスマートフォンを取り出せば通話履歴の1番上にある〝彼〟の名前をタップし─── だが、通話開始の画面をタップすることがなかなかできなかった。「 こたろう、…薫に、かけても迷惑じゃないかしら。きっとご両親と一緒にいるのに、邪魔しちゃ申し訳ないわ。 」と大きな瞳に涙の膜を張りながら不安げな声で問いかけて。だが無論犬が人の言葉を理解できるはずもなく……はずも無いのだが、愛犬はわふ!と一言鳴いた後に通話開始画面を鼻先でタップして。 )
【 椿 】
、─── …………いた、く、ないの。
( 黒布の向こうから現れたのは、自分が想像していたよりもずっとずっと美しい、彫刻のような男。蘇芳の瞳でそれに見蕩れていたのも束の間、羽織で隠されていた右腕は明らかにヒトとは違う見目で更には赤黒い包帯でぐるぐると其れに巻き付けられているのを見てはびく、と1度体を強ばらせた後に彼の右腕と比べれば握るだけで折れてしまいそうな小さなヒトの手でそっと其れに触れては上記をぽつりと問いかける。その瞳は怯えよりも心配が勝っているような色で、いつもの刺々しい雰囲気はすっかりと抜け落ちていて。 )
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