通りすがりさん 2023-12-27 11:12:37 |
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【 妃 硝華 】
─── っ、きゃ、
( 〝彼〟に家まで送って貰って暫く。段々と近く大きくなる雷鳴に小さく悲鳴をあげれば愛犬であるこたろうをぎゅっと抱きしめてそれらに耐える。先程はやはり〝彼〟が近くにいたから不安の花が咲かなかっただけで、近くに彼がいないだけで魔法が切れてしまったかのように花たちは硝華の心に咲き溢れてしまう。ここにほかの第三者がいるのであれば硝華もいつものようににこにこと穏やかなお姫様の仮面を被っていられたのに、誰も見ていないこの部屋では去勢を貼ることすらままならない。「 …薫、 」と小さく呟いた王子様の名前はひとりと1匹だけの部屋に混じっては消えて。 )
【 椿 】
─── 、。
( 吹き抜けた一陣の風に、今まで自分と彼の目の前にあった黒布が揺れる。ひらりとめくれ上がった黒布の先には優しげに口角の上がった薄い唇と自分と何ら変わりのない色の肌。てっきりお顔が無いんだとか、真っ黒なんだとか、怖い話でよく見るそれらを想像していた椿はきょとん、と思わず瞳を丸くして風がやんだ今いつものように彼の顔を覆う黒布をじっと見つめて。「 …ねぇ、どうしていつも顔を隠しているの?…なにか怖いことでもあるの?目を見たら何かある、とか。 」とこてりと首を傾げればそれと一緒に自身の黒髪を彩る簪がしゃらりと音を立てて揺れて。 )
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