通りすがりさん 2023-12-27 11:12:37 |
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【 妃 硝華 】
!……。
( 何時から分かっていたのだろう。〝彼〟の優しい手にふと引き寄せられれば、そのままぽすりとその胸元に収まって。ぱちぱち、と瞬きを繰り返した後にそれに甘えるようにそっと彼の服を軽く指先で掴めば「 ……バレちゃってたの、? 」と普段のふわふわとしたお姫様然とした喋り方ではない、不安にまみれた幼い女の子のようなころりとした小さな声でそっと問いかけて。〝彼〟の香りいっぱいに包まれた途端、遠くに聞こえたゴロゴロという小さな雷鳴は気にならなくなったのは、きっと彼しか使えない魔法なのだろう。王子だけでなく魔法まで使えるとは、一体どれだけ自分の─── お姫様の心を掴めば気が済むのだろう。 )
【 椿 】
─── お邪魔します。
( 翌日。いつも通りのお気に入りの和服に身を包み、髪もまとめて、それから両手いっぱいの花を抱えて。鈴の転がるような声でそう零しながら鳥居をくぐれば朽ちかけている本殿の方へちらりと目線をやり、今日はいるかしらなんて首を傾げる。ダリアを基調とした赤色の多い花束。これらは満開すぎて華道では使えなかったものたちなので、花束としては今が見頃なものだ。これならば寂しいこの本殿も少しは明るくなるだろう、と花に目線を落としては「 …葵依? 」と奥の方へと声をかけて。 )
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