通りすがりさん 2023-12-27 11:12:37 |
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【 妃 硝華 】
─── まぁ。だめよ、薫。風邪を引いちゃうわ。
( 今にも雷鳴が轟きそうな曇り空。硝華の苦手なものの一つである其れがいつ鳴るのかと不安げに一瞬眉を下げたものの、此処は外だと思い出せばその表情はすぐに淑女の面に変わる。だが、とうとう涙を流し始めた空に慌てることなく颯爽と傘を取りだしてくれた〝彼〟に有難う、とお礼を言いながら其方へ顔を向けては雨に濡れないように傘をこちらに傾けていることに気付く。いくら紳士然とした王子様だからといっても雨に濡れたら屹度風邪をひいてしまう、と硝華はぱちり、と大きな瞳をまんまるにしたあとにそっと傘の柄を持つ手に自身の手を添えて傘を真っ直ぐに直して。「 雷よりも、貴方に風邪をひかせてしまう方が怖いの。 」と〝彼〟の手を包み込むように両の手でそっと握っては、鳴り出しそうな雷に不安な気持ちを滲ませたエメラルドでじっと見つめて。 )
【 椿 】
─── ね、葵依。貴方、花は好き?
( 今日は金曜日。明日は奇遇にも華道の用事はないから、またこの社に来ることが出来るだろう。まだまだ彼のことは分からないことばかり、今までこんなふうに誰かを深く知りたいと思った事がない為か少々不思議な気持ちになりつつもするりと離された手はなぜだか繋いでいた時よりもひんやりと冷たく寂しく感じ、椿はその手持ち無沙汰を誤魔化すようにぎゅ、と拳を握る。椿は数歩だけ彼から離れれば彼と同じくさらりとした黒髪を揺らしながら振り向いてはふとそんな質問を。「 …深い意味は無いけれど!なんとなくよ! 」とまた可愛くない一言を付け足せば、どうなの、と言いたげな強請るような瞳で彼の黒布をじっと見つめて。 )
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