通りすがりさん 2023-12-27 11:12:37 |
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【 妃 硝華 】
─── 、いいえ。少し考え事をしていたから、待ってないわ。
( そういえば、高校に上がってから視線や思いを伝える手紙こそ下駄箱に入っていたりすることはあれど告白される機会がめっきりと減った。男性が怖い硝華にとっては願ってもいないことだが、中学生の時にあんなに毎日のように呼び出されていたのに一体どういう変化なのだろう。そんなことをぼんやり考えていれば、ふと自身にかけられた優しい王子の声で思考の海から意識を上げて。にこ、と穏やかな笑顔を返しながらふるりと首を横に振れば「 もう用事は良かったの? 」と、先程まで暗雲の広がる空に不安だった気持ちもすっかり忘れて立ち上がれば、まぁ恐らく用事というのは告白だろうということは前提として〝彼〟に問い掛けて。 )
【 椿 】
、…………あ、有難う……?
( 彼の視線 ─── その瞳は黒布に覆われて見られないけれど ─── を追ってふと空を見上げると、空はもうすっかり夕闇のカーテンを閉めようとしている頃。烏たちはもう帰れと言わんばかりに鳴きつつ頭上を舞い、風がざあざあと木々たちを謳わせる。もうこんな時間、なんて目を丸くしていれば、こちらに伸ばされた彼の今にも折れてしまいそうな白い手に戸惑いながらもちいちゃな手を重ねては、キュ、と困惑したように眉を寄せて。手首などは女の人みたいに細いのに、やはり触ると自分の手なんてすっぽりと覆われてしまうような大きな男の人の掌はヒトじゃないということを差し引いても椿があまり触れたことの無い感触で。「 ……でも私、もう18歳よ。一人で帰るのに寂しいなんて歳じゃないわ。 」なんてつん、と椿色の唇を尖らせてはまるで幼子のように自分を扱う彼に不満げに言葉を零して。 )
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