通りすがりさん 2023-12-27 11:12:37 |
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【 妃 硝華 】
─── えぇ、私の王子様。
( 恭しく此方に一礼をする姿はまるで物語に出てくる王子様そのもの。ブラウンダイヤモンドのように輝くその両の瞳に自分だけが写っている事がなにだかとても嬉しくて胸がそわそわとざわめく感覚がするが、そんな女々しい感情に蓋をして綺麗にラッピングをすれば王子様の横に立つに相応しいお姫様の姿になる。彼女のエスコートに身を委ねながら歩けば周りの生徒たちからは黄色い声や草花がざわめくような羨望の眼差しが向けられる。…男女関係なく、だ。最も女子生徒たちの視線は自身をエスコートしている麗人に向けられているものがほとんどなのだが。硝華は其方へにこ、と微笑んで軽く手を振れば隣の王子様にそっと唇を寄せて「 …妬いちゃうわ。 」なんて小さな声で囁いてはむ、とさくらんぼ色の唇を軽く尖らせて。 )
【 椿 】
っ、…いいの。ここが好きなの、私。
( ふ、と薄布に包まれた顔を近づけられればそれとおんなじ距離だけ彼から距離を取りながら椿は上記を答え。薄布の向こうから紡がれる言葉は何処までも柔らかく、そうして人ではないような不思議で神秘的な音でするりと椿の胸の中に入ってくる感覚にふい、とそっぽを向けば高い位置で結ばれたポニーテールがサラリと揺れて、音もなく肩に落ちる。「 どんな神様がいてもいいの、……静かで、私以外誰も居ないから。 」幾ら古き良き伝統のある家の者だからと言っても椿は古い文字が読めないが、それでも此処があまり〝良いモノが祀られている〟とは言えないのは何となくわかっていた。だがそれでも誰も居ない空間というのはつまり誰にも悪態をつかなくて良いということである為、1人になりたい時は必ずここを訪れていたのだ。だが。「 そもそも!貴方だって参拝じゃなければどうしてここにいるの?神主さん…は今まで見た事ないし、主がいないだなんてわからないじゃない。 」 む、と椿色の唇をツンととがらせながら蘇芳の瞳を薄布の向こうの瞳に向けてはまるで自分の家かのように此方へ問いかけた彼の素性が知れずに警戒を隠すことなく眉をひそめて。 )
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