通りすがりさん 2023-12-27 11:12:37 |
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【 妃 硝華 】
まあ。うふふ、有難う。
( するり、と彼女のしなやかな手にそっと手を取られてはそのまま手の甲に薄く美しい形の唇が落とされる。此方を見つめる彼女のヘーゼル色の瞳は爽やかな朝の陽にきらりと光っており、背後の花壇の花々たちよりも華々しい笑顔はそれだけで女子生徒たちが卒倒してしまうほどだろう。だが幼馴染である硝華は慣れたように、まるでドレスを着た淑女のように軽く膝を曲げてそのキスを受け入れて。彼女の影響で自分も自己流ながらイギリス流の淑女のマナーを頭に叩き込んでいた幼少期が懐かしい。硝華はふわ、と柔らかく微笑めば「 貴方もとっても素敵。朝露に光る薔薇みたいだわ。 」と自分よりも幾分か背の高い彼女を見つめながら甘ったるい砂糖がたっぷり入ったはちみつの紅茶のような声でそっと囁くように言葉を交わして。 )
【 椿 】
っひゃあ、!
( そろそろ家に帰った方が良いかもしれない、否でも、なんて自分の中で毒にも薬にもならない自問自答を繰り返していればふと肩に乗せられた手の感覚と鼓膜を震わす不思議な音の柔らかいテノールに思わず可愛らしい悲鳴をひとつ漏らして。パッ、と名前と同じ椿色の唇をちいちゃな両手で隠しながら立ち上がりつつ後ろを振り向けば、そこには人ならざる神秘な雰囲気を持つ、顔を黒の薄布で隠した男性の姿。ばくばくと五月蝿い心臓の音をBGMに「 あ、あなたは誰。突然女性に触れるなんて失礼だわ。 」と不安ではち切れそうな心を隠すためか無意識に何時ものように強がって突っぱねるような言葉を。だがしかしその瞬間〝若しかしたらこの神社の人かも〟とふと考えれば「 ぁ、……いいえ、ごめんなさい、ええと…参拝、に来たの。 」と先程の強気な蘇芳はしゅ、と身を潜め不安げに眉を寄せながら小さな声で答えて。 )
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