通りすがりさん 2023-12-27 11:12:37 |
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【薫・クリフォード】
…ふう…お疲れ様。ありがとう、良い勝負だったよ。
(早朝。フェンシング部の朝練習を終えて防具を外し、対戦相手を務めた1年生の女生徒に爽やかな笑みを向けた。途端にはにかむ女生徒へ礼儀正しく頭を下げ、そのまま部室を後にする。─と、ふと部室の外から見える花壇の花に元気がないことに気が付いた。古い園芸倉庫から緑の如雨露を持ち出し、水を汲んできて─「おはよう、お嬢さん方」と声を掛けながら花壇に水を遣る。朝日に照らされた金糸のブロンドヘアが輝き、朝の冷えた空気も相俟ってか、どこか現実感のない─絵画のような光景が広がっていて)
【葵依】
……ようやっと出られた。
(朱の剥げて傾いた鳥居の奥の奥─扉部分に数え切れない程の札が貼られた、一際酷く朽ち果てた本殿が、その中からガタガタと微かな音を立てる。少しの間その音が鳴り響き、やがてぴたりと収まった後─然程大きくは無いが、良く通るその声が境内中に響いた。破壊された本殿の中からぬう、と姿を見せたのは─顔に薄布を張った、半ば引き摺る程長い黒髪で、赤黒く変色した包帯が幾重にも巻かれた右腕を持つ─異型の大柄な男。彼は着物に付いた埃を払うような所作を見せた後、ゆっくりと足を踏み出し、鳥居の方へと向かって歩き出し)
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