館の魔女 2023-10-17 21:30:43 |
通報 |
「しかし……いえ、承知致しました」
使用人である自分が主人と同じ立場になるわけには、と留まろうとしたが、この場では指示に従わぬ方が不敬であると考え直した。立って一礼してから、外套を脱ぎ、剣を外して膝の上に置くようにしてソファに腰掛けた。
主人の咳払いと質問を聞き届け、少し頭を捻ってから答えた。
「私はかつて騎士でしたので、その職務柄怪我をすることが多々ありました。重い傷を治す為、魔法を扱う者の世話になった事が何度かあります。その者とは何度か話す仲でしたが、今は疎遠になってしまいました。後は……敵として魔法使いと戦った事が、一度だけ」
自然と剣の鞘を握る力が強くなる。その敵対した魔法使いには苦い記憶があった。ネガティブな話題の為、伝えるのを躊躇ったが、結局伝える事にした。隠し事はすべきではないという考えのもとに。
トピック検索 |