館の魔女 2023-10-17 21:30:43 |
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「寛大な御心に感謝の意を。ええ、兜を被っております故、少々声が聞き取りにくいやも知れません。どうかお許しを」
そう答えながら、自分の手に添えられた優しい感触を鎧越しに確かめ、その小さな手や自分に向けられた笑顔を見つめる。自らの大きな身体と比べれば、華奢だ。元よりぞんざんに扱うつもりなど欠片も無いが、もし触れる機会があれば細心の注意を払わねばなるまい、特に鎧を身に付けているのだから。
やがて、ソファに腰掛けた主人となる女性が自己紹介を終えると、男は僅かに片目を細めた。予期していたとは言え、直接盲目である事実を伝えられると辛いものがある。これからは自分が主人を支えなければならないと心中で強く決心し、右手を胸に当て、左手を立てた片膝の上に置く様にして跪いた。
「申し遅れました、我が名はブローディ。貴女様の目となり、手となり、足となり、盾となる者。所用とあらば、何なりとお申し付け下さい」
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