館の魔女 2023-10-17 21:30:43 |
通報 |
「承知致しました。ではご厚意に甘えて」
音を立てて威圧感を与えぬように、大きな歩幅で追い越さぬように、忍び足かつ小さな歩幅で人一人分の間を開けて歩き始めた。
歩く道中、男は生垣に触れながら歩く女性と、先程自分と会った時の反応を重ねながら思案していた。
(私と会った時の視線の動き、常に何かに触れながら歩く動作……もしや……いいや、よそう。あれこれと勘繰るのは良いとは言えない)
戒めるように首を左右に振り、後を追った。
屋敷は古いながらもしっかりとした造りで、男は声には出さずとも感嘆した。時折錯覚かも知れないが煌めきのようなものが見え、少々の神秘さも感じていた。
客間へ案内され、話しかけられた声に従って籠手を外そうとしたが、躊躇った。どうやら男には失礼だと理解していても簡単には外せない相応の理由があるらしかった。
「申し訳ありません、私は個人的な理由で鎧を外す事ができないのです。ですので、鎧越しでも宜しければ」
そう言って、同じように両手を前に差し出した。
トピック検索 |