館の魔女 2023-10-17 21:30:43 |
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客間に現れた主人の軽やかな足取りと、その頭上を飛び交う精霊の煌めきを見て、思わず兜の中で口角を上げた。主人も精霊達も本当に楽しそうにしており、その姿を見ていると此方も嬉しくなってくる。やはり出来ることならずっと今のように笑顔でいてほしいものである。今後も主人が笑えるように出来る努力を最大限行おうと思いながら、精霊達がバスケットをテーブルに置き、主人が先に着席したのを確認してからソファーへ腰掛けた。
主人が食器具を手に取ろうとして一瞬手を止めた姿に配置に失敗したかと眉を顰めたが、それは主人の笑顔と言葉ですぐに杞憂だと分かった。しっかり喜んでもらえた事に安堵しながらも、僅かに顔を綻ばせて答えた。
「お褒めの言葉、感謝致します。食事の用意を整えるのは久しく行なっていたかったものですから、少々不安でしたがお気に召されたようで何よりです。それにしてもビオラ様は聡明でいらっしゃいますね。貴族になった気分、とお褒め頂きましたが、まさしくその通り。かつて仕えていた領主様の意向により、騎士だけではなく執事や使用人としての仕事も行っていましたが、その仕事の中で貴族の食事会の準備を行う事があったのです」
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