館の魔女 2023-10-17 21:30:43 |
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しばらく壁にもたれ掛かり、腕を組んで考え事をしていた。そうしてどれ程の時間が経過しただろうか。ふと顔を上げると、ふわりと漂う美味しそうな香りが漂ってきた。食欲をそそられる香りだと感じたが、考えればこの屋敷には自分と主人以外には誰もいない。となると主人が料理を作っているのだろうか。魔法を用いているのかもしれないが、しかしそれでも火や刃物を使うのであれば万が一があってはいけないと部屋を飛び出し、案内された記憶を辿りながらキッチンへと早歩きで向かう。
「たしか、ここが……」
それほど時間をかけることなくキッチンへたどり着き、中の様子を確認しようと頭を覗かせれば、主人が器具を用いて料理をしている姿が見えた。何事もなさそうな姿に安堵しながらも、話しかけるためにゆっくり近付く。
「突然ながら失礼します。良い香りが漂ってきたもので、つい誘われてしまいました。私にも何か出来ることはありますでしょうか?」
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