館の魔女 2023-10-17 21:30:43 |
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少し前に、魔女は誤解されやすい、と説明されたばかりなので、街の主人に対する雰囲気があまり芳しくないと聞いて兜の中で僅かに表情を強張らせた。やはり魔法という超常の力を使う、自分達とは明確に異なる点が、噂の原点となっているのだろう。主人は目が見えないという点も合わさり、尚更噂や主人が苦手とする雰囲気が構築されていったのだろう。少し俯き気味な主人の姿を見て、今後街に行く際は、常に警戒するようにしなければ、と考えたところで、その考えは主人の笑顔と次に続く言葉で改められた。強張った表情を緩め、胸に手を当てて話し始める。
「それは良いことです。評判が良いという事は、ビオラ様がお仕事に誠実であられた証でしょう。今後、お仕事の手伝いや街に用事がある際は、是非とも私をお使いください。無論上げた評判を落とすような事は致しません。必ずやお役に立ってみせましょう」
前の使用人もいなくなり、依頼主に手伝って貰わねばならなかったというのは、さぞ苦労したことだろう。使用人がいなくなったことで、それがまた新たな噂を生み、街に対する苦手な意識を強める一因となったかもしれない。そのような苦労や心労を解消し、なるべく笑顔でいてほしい。そういった感情のもと、手伝いへの名乗りを上げた。興味のある主人の仕事を手伝ってみたいという俗人らしい感情も僅かにあったが、不敬だと思考の隅へと追いやった。
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