館の魔女 2023-10-17 21:30:43 |
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郵便受けに入っていたのは2枚の封筒。手で感触を確かめながら家の中へ戻ろうかと踵を返そうとした時、ふと聞こえてくる金属音…いや、足音に気が付けば、其方の方へと顔を向け耳を済ませる。近付いてくるその足音は自身の前で立ち止まり、その様子に数歩後ずさるが、続けて聞こえてくる話し声にゆっくりと合わない視線を動かした。
「 あらあら、案内書を見て来てくださったのね!嬉しいわ。
……えぇ、私が依頼人よ。
立ち話もなんですから、家の中へどうぞ。」
聞いたところによると使用人の案内を読んで来てくれたらしく、それを聞いて嬉しそうに笑顔を向け、此方も一礼を。
上記を述べながら再度踵を返すと、またも生垣に手を添えながら玄関への道を辿っていく。
見る限り古いながらも大きく立派な屋敷だが、実際に住んでいるのはこの少女1人らしく、大きな扉を開けても聞こえてくるのは静寂のみ。しかし、所々空気に漂うように小さな煌めきが見えるのは、果たして視界が霞んでいるだけなのだろうか。
室内に入ると、さも慣れているように迷いなく歩みを進め始め「こちらへどうぞ」と客間へと案内していく。
客間へ入るや否や、くるりと背後へ向き直り、両手を相手がいるであろう方向へ伸ばせば、穏やかな表情のまま言葉をかけた。
「 いきなりごめんなさいね。ちょっと手を拝借しても宜しいかしら? 」
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