館の魔女 2023-10-17 21:30:43 |
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おそらく魔法によるものだろう、飲み終えた後のティーセットが消える姿を見やりながら、魔法というものはいつ見ても驚いてしまうほど優れている、と感じながら主人の後に着いていった。
階段の中程に差し掛かった所で、目の前で主人が階段を踏み外した。危ないと感じたのも束の間、即座に真後ろに付き、落下せぬようにその肩を両手で支えた。いざとなれば自分が下敷きにと考え、そうなるように背後に回ったが、その心配をする必要はなかったようだ。充分主人を支える事が出来た。騎士だった頃と比べれば身体能力は劣っているが、かといって力が全て失われた訳ではない上に、身に付いた経験や反射は据え置きである。それが目の前の危機を救う一助となった。
「お怪我はありませんか?」
距離が近いので、ちょうど主人を見下ろす形となった。兜の覗き穴から、翡翠色の右目が身を案じるような目付きで主人の姿を見つめていた。
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