館の魔女 2023-10-17 21:30:43 |
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がしゃり、がしゃりと凡そ森の中という静かな環境には似つかわしくない金属音を立てながら、一方向へ向かう男が一人。その人間は190cm程の長躯に加え、それに見合う大柄な体格を有していた。また、文字通り全身を甲冑で固めており、顔を含め一片も肌の露出がない徹底ぶりである。まるで戦に赴く騎士の様な出立ちに見えるが、本人も目立つと理解しているのかフードの付いた濃茶色の外套を羽織る事で誤魔化しているらしかった。しかし厄介事に即座に対応する為か、鞘に仕舞われたロングソードだけは外套の上からベルトを通して腰に下げられていた。
(案内書によれば、この周辺にあるようだ)
男は訳あって次の仕事を探していた。良い仕事先が見つかる事を祈りつつ街を彷徨っていたが、この度案内書を発見し、ここで働こうと決心して現在に至る。書を片手に森の中を歩き続け、目的地の屋敷へと辿り着き──そして、郵便受けとその前に立つ長髪の女性を見つけた。
男はその女性に向けて、胸に片手を当て一礼した後に話し始めた。
「突然の来訪、失礼致します。街にあった案内書を確認し、使用人として働くべく馳せ参じた次第であります。我が主人となるのは貴女でお間違えないでしょうか?」
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