館の魔女 2023-10-17 21:30:43 |
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彼がカップを手に取り紅茶を嗜む様子を僅かな音で感じ取りながら、気に入ってくれたようで良かったと安堵しつつ、嬉しそうに微笑みを向けた。
そして、部屋の話をした後に聞こえた驚きと遠慮混じりの声音を聞けば、再度クスリと笑って「大袈裟よ」と返す。
「 最初にも言ったけれど、あまり気を遣わないで。
私は貴族でもなければ、ただのしがない魔女なのよ。貴方に少しお仕事をお願いするだけなんだから、あまり崇めないで頂戴?
それに、この屋敷、部屋だけはたくさん余っているから、必要なら他の部屋も使って下さいな。」
かつて騎士だったと言っていた彼は、その時もきっと誰かに仕えていたのだろうか。その言葉遣いや想像しうる所作からも洗礼されたものを感じるが、もし、彼が気を悪くしないならばもっと楽に接してくれても良いのだと伝えておく。それに、余ってある部屋にも頭を悩ませていたところだし、使ってもらえれば本望だ。
ゆっくりと紅茶の最後の1口を飲み干すと、いいことを思いついた、と言わんばかりに表情を軽やかにし、「 私のことはビオラって呼んでね。」とにっこりとした笑顔で言う。
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