掲示板ファンさん 2023-09-16 14:07:27 |
通報 |
( 戦闘開始。特殊個体に向けて前進する相棒とは逆に、己は遠ざかり壁を探す。瓦礫と氷の積み上がった陰、ライフルに変形させた武器を構え、一応、爆薬を飛んでくる塊に撃ち込んでみる。「……駄目だな。」ど真ん中、命中したはいいが威力は半減以下。多少脆くなった塊が砕けかけて軌道を逸れる程度。それでも実弾や何もしないよりマシと、相棒の死角に入る塊を、一つにつき数発ずつ撃って何とか壊す。スコープ越し、相棒が早くも目標に辿り着いたのを確認して、警戒をほんの僅か緩めたその矢先、目に飛び込んだ光景に、「――何を、」一度目、絞った声は震える。思考が怒りで消えていく。「――何を、している。」二度目。今度はハッキリと。どちらに向けてとも知れないその声は、地の底の如く低い。――スコープを外す。ゆらりと立ち上がる。岩陰を出る。そして、ライフルの実弾を滅多撃ちにする。だが相棒には当然、個体本体にも当てない。こっちを見ろと、ただ個体の意識を自分に向けさせるだけの行為。その意図は相棒の救助と、「……潰す。」“敵”への殺意表明。個体が此方を認識したその瞬間に、前方へと走り出す。投げられる氷塊を持ち前の動体視力と反射神経だけで強引に回避していく最中、両の掌からは滲み出す薬性血液が、武器の表面を伝ってパタパタと落ち――そのたった一滴ずつが各々に凍り付いた地を融かし穿ち、足跡の代わりに経た道筋を残していく。それに何か本能で感じるものでもあったのだろう、個体側から、どうあっても直撃するコースに大きな塊が現れ、「……邪魔。」だがそれを変形させた武器、唯一の白兵戦仕様である銃剣の先、己の血に塗れた刃で袈裟斬りに払えば、塊はあっさりと真っ二つに融け切れて落ちる。なれば走る速度は落とさない。リボンが切れて髪が解けても、避けきれない攻撃が肩や脚を薄く裂いても。そして遂に目の前に迫り、銃剣を槍宜しく振り被る――が、寸でで飛び退かれ、刃は地に突き刺さる。しかし、衝撃と勢いに己の血液が身に跳ねたらしい。個体はその脚の片方に酷い焼け爛れを負っている。熱い、溶ける、と珍しく意味有る言葉を個体が発して、 だが此方は無音のまま、相棒と個体の間に立ち、“敵”を明確な憎悪を赫々と湛えた瞳で捉える。「――――」ギチリと噛み締めた歯の合間から、獣の息が漏れた。武器を伝う血液は先程より量が増え、その特性も握る武器自体をも融かし始めるまでに濃度が高じていたが、アーネスト自身に気付いた様子は無い。つまり――能力が、明らかに本人の制御を外れている。その過程で、別の毒性でも混ざったか、個体の動きが鈍ってきている。それで戦意か意識が薄らいでか、冷気も少しずつ和らぐ。しかし、それは知った事ではない。“敵”の完全な排除に再び武器を構えて、刃の届く距離まで詰めんと姿勢を前傾させて )
トピック検索 |