掲示板ファンさん 2023-09-16 14:07:27 |
通報 |
(愛車が現場に到着するなり、ぞくりと底冷えするような冷気が服の隙間から入り込んできた。寒さに若干震えながらもヘルメットを外しながら現場に入り、相棒と同じく特殊個体を観察してみる。─モニターで見た通り、かなりいい大人だ。下手をすると自身の親程度もあるだろうか。そんな年齢の人間が子供のように暴れ回っているとは情けない、と口に出す代わりに溜息を一つ。こちらに視線の戻ってきた相棒の正直すぎるほど正直な発言にやっぱそっか~、とどこか諦めたように笑いながら、修理から戻ってきたらしい月光を鞘から抜いた。日に照らされた月光は、その青白く光る高熱の刃が光を反射し、妖しく輝いている。相棒の期待の言葉には苦笑を浮かべ、眼の前の次々に生成されていく氷塊と自身の月光の刃を見比べてから「ん~…どうだろ。効くか効かないかだと、結構微妙かな~」と珍しく弱気に呟いた。だがこちらに気付き、威嚇するように小振りな─子供の拳ほどの氷塊を投げ付けようとしてくる特殊個体と向き合うと、相棒と同じく気合を入れるような息を一つ、普段の軽薄さは何処ぞへ鳴りを潜めた、真剣な眼差しで月光を構える。目前に月光を突き出し、防御するような形で特殊個体に向けて一歩踏み出した。投げ付けられた氷塊は次々に月光の刃に命中して一瞬の内に溶け、溶け切らなかった分は面倒そうではあるが捌きつつ、特殊個体への歩みを止めることはない。時折捌き切れなかった氷塊が頬や腕を掠め、小さくも鋭い切り傷を付けていく。その都度痛みに眉を顰めるものの、最短距離を突き進んで特殊個体と対面する。「は~い、ご対面。オレ、アンタを制圧しにきたんだよね~。無駄な抵抗はやめてさ、大人しく捕まってくれると助かるんだけ…」その言葉が最後まで言い切られることはなく、特殊個体は何事かを叫びながら自身─イヴの腕を鷲掴み、氷塊で武装した拳で何度も何度も殴り付け始めた。その度にイヴの表情は痛みに耐えかねるように歪む。顔には出さないものの周囲に漂う冷気の所為で低体温症になっていたようで、異能を使う余力すらないらしく)
トピック検索 |