匿名さん 2023-08-22 20:24:32 |
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━━━お初にお目にかかります、主様。
( まだ、じりじりとした暑さが続く夏季の日。真っ黒なスーツに身を包み、窓から差す鋭い日差しにじわりと汗をかきながらも、手袋をはめた右手を胸に当て、お辞儀をする姿勢は1ミリたりとも崩さない。
少し古くて趣のある屋敷だがその広さは十分で、目の前の相手に届くほどの声量しか出していないはずなのに、自分の声がよく響くのが分かる。
おまけに、自分の他に使用人はいないらしく、巷で流れる噂によれば皆逃げ出すように辞めてしまったとか…、まぁ、それが本当かどうかは分からないが。)
ミヤビ家からやって参りました、名を、ハルと申します。
今日から主様に仕えることと相成りました。
どうぞ、よろしくお願い致します。
( 更にもう一段階頭を下げながらそう言うと、自身の黒い髪が瞳にかかるのが分かる。
ミヤビ家は、アジアの異国生まれの名家だったが、その名は年々薄れていき、今は優秀な兄が名誉の再構築を行っている。
それに比べ、容量も器量も劣る自分は、せいぜい高層社会に君臨する名家に売られ、働くしかない。
異国譲りの黒髪、幼い顔立ち、168程しかない小さな背丈。こんな自分で如何ほどの役に立てるかのかは分からないが、なにせ、我慢だけは得意だ。どんな事があっても乗り切ることは出来るだろう。
そんな事を心の中で思いながら、主様からの言葉を待った。)
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