龍神 2023-08-20 23:05:18 |
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それはお前が一番楽しみにしていたことだろう、俺がやってしまって良いのか?……そうだ、こうしよう。俺が半分を掛けるから、お前はもう半分を掛けてくれ。
(彼女が引き結んだ唇と、すぐに覆い隠してしまった笑顔に忍び笑いを漏らしては、小さな手を指さし代替となる提案を告げて。小さな銀の中に満たされたシロップをバターに注ぐのはほんの少し。温かな液体で少しだけ凹んだバターにうん、と頷くと、こちらへ押された皿をもう一度彼女の方へ。その間に彼女が乱入者へ向けた言葉は己が言葉を惜しまずに告げる普段のものと重なり、その通りだと言わんばかりに目元を緩め。しかしその言葉を掛けられた対象が乱入者だと気づいてしまえば裏腹に口は引き結ばれて。目まぐるしく変わる表情は直近の間笑顔しか見せていなかったことと反比例するようでもあり、現状には気が付かないまま彼女の動向を見守る。ぴくり、と動いた眉は差し出されたフルーツサンドを見てのもの。反射的に動いた腕は白い皿の中の色彩豊かなパンへ。風神に差し出されたはずのフルーツサンドの一つをひょいと摘み上げると、そのまま口に運んでしまって)
……これでもうお前の分はない!俺の可愛い可愛い黎明が寄越したものはすべて俺のものだ。お前の分があると思うな!
わぁ、ありがとう。君はとっても良い子なんだね。
(答えた共に差し出されたのはおそらく彼女の好物。自分の好きを惜しげもなく差し出す様子は下手をすれば自己犠牲精神とも取れそうなものだが、自分が愛されていることを疑わない言動が添えられたことで印象が百八十度回転する。彼女と彼の応酬を目にする間にコーヒーとキッシュは全て胃の中に収められ、空になった皿を目敏い店員が下げに来ており。やがて横取りされたフルーツサンドにあーあ、とわざとらしく落胆のため息をついたのは、これから先の展開を優位に働かせるため。眉を下げて悲しげな顔を作っては、保護者の喚きには目もくれずただ彼女だけに視線を定めて)
折角君がくれたのに横取りされちゃったな。僕、なんにもしてないのにな。
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