龍神 2023-08-20 23:05:18 |
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……あ、ああ…。それじゃ、二つとも頼んでご覧。片方を俺が食べよう。
(眼前の愛し子の視線がある手前下手なことは出来ないとひくひく痙攣する口許は葛藤を示すようで、彼女の言葉になんとか返答を終えると招かれざる客の姿に剣呑な目を向けて。可憐な仕草で愛想良く対応を終える彼女は自身よりも余程出来た態度と言えるだろうが、未だニコニコと笑みを浮かべている彼は信じられない程の厄介者。ここが喫茶店でなければ否応なしに殴りかかってやるのに──額にビキ、と青筋を浮かせ犬歯が僅かに伸び出して。「……それから黎明、こいつをお兄さまなんて呼ばなくてもいい!本当に、本ッッ当に近付いちゃいけないやつなんだ…!」気が気ではないといった様子で両者を交互に気にしながら、彼女の肌を突いた人差し指に手を伸ばし反対側にボキ、と折るつもりで力を込める。しかしどれ程を経ても指に異変が起こることはなく、心底面白くないといった調子でフンと鼻を鳴らし。)
お兄様じゃないのなら名前で呼んでくれるのかな。僕は朝霧だよ、黎明ちゃん。夜刀から聞いたことはある?
(折られようとしている指にも全く構うことはなくマイペースな調子で話を続けると、簡単な自己紹介を終えたようで余裕げに質問を添え。幾ら力を込めてもその骨は悲鳴を上げることもなくなんて必死なんだろう、と哀れみさえも感じさせる表情を浮かべており。そのまま視線は彼女の方へ、取り乱した保護者の姿をどう受け止めているのやらと瞳には好奇心が疼く。やがて解放された人差し指で銀色の呼び出しベルをちりん、と鳴らしたならば尚も笑顔を保ちつつ、現れた店員にメニュー表の頁を指さして)
パンケーキ、フルーツサンド、キッシュ、赤色と白色のクリームソーダ、コーヒー。……ふふっ、折角の縁だし今日はごちそうしてあげよう。嬉しいでしょう?
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