龍神 2023-08-20 23:05:18 |
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ふふん、そうだろう。何せ黎明を世界一愛しているのはお父さまだから。
(若干人の気に酔うような素振りは合ったものの、目的地にたどり着いたことで霧散したようでほっと一息を入れて。次いで自身に向けられる眼差しと笑みには鼻を高々と伸ばしつつ寵愛の言葉を告げ。導いた先の机で若干足の置き場に惑ったかスラックスに包まれた脚を組み替えては柔らかい椅子の背もたれにギシ、と身を預ける。彼女の選択を待つ中クイズに持ち掛けられたのは分かりやすいほどの瞳の揺れ。忍び笑いを漏らしながら惚けた風に「さて、どうだろう。何せどの色も黎明にぴったりだ、」お手上げ、といったように降参を示す両手を上げて目を瞑る。再びゆっくりと開いた先では彼女の視線を受け止めている自身の瞳をきゅ、と細め、一心に寵児の姿を映している虹彩に悪戯げな童心を宿して。メニューをなぞる人差し指はゆっくりと自身の瞳へ、紅一色の色彩に焦点を合わせては「でも、これがお前の一等だろう?」、瞳だけではなく自身でさえも含んでしまうようなそれは確信にも近い戯れで、得意げな響きが混ざる。彼女が言葉に是を返すとすればまたページを捲り、上機嫌のまま軽食は何にするかと暗に問う心算で。パンケーキ、サンドイッチ、グラタン、キッシュ等と定番のメニューが立ち並ぶそこに目を留めながら再び彼女の選択を待つ、といった姿勢を取った直後、トントンと新たな来客を示すノック音が響く。気にも留めないつもりだったのはたったの数秒、視界の端にちら、と覗く見覚えのある背格好に意識が飛ばされてしまえば来客の姿に地の底から鳴り響くような低音が漏れ出て)
あ゛……?んだと…
──ん、やあ、奇遇だね。…ふふ、旧来の友に酷い態度だ。
(陽射しからすれば暑苦しい程着込んだように見える学徒御用達の服の上、頭上の帽子を降ろして胸の前で抱えて入室したのは少年を象った何か。さらりと流れる黒髪を傾けては自身に掛けられた不敬の声へと顔を向け、それがどうやら久しく見ていないかつての知人であったことに気がつけば頬に笑みを浮かべて見せて。どこか白々しく再会の挨拶を終えれば当然のように龍神とその寵児の傍らのテーブルからひょいと椅子を拝借し、本来二人掛けのテーブルの横に陣取って。両者の態度には全く頓着すること無く平然と彼女の方へと手を伸ばし。頬杖を付き相手の肌をつん、と突くようにちょっかいを出しながら)
なかなか可愛い子じゃないか。お嬢、君は今代の夜刀の贄かな?
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