龍神 2023-08-20 23:05:18 |
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ああ!お前にぴったりの甘いさくらんぼが乗っかっているはずだよ、俺の分も分けてあげような。
(彼女から向けられる衒いのない言葉に照れる様子もなく当然だ、とばかりに頷けば爪先へ突っかけた靴の中に足を押し込み、繋いだ手はそのまま目的の場所へと意識の座標を合わせて。同時に問い掛けに返したのは力強い同意で、微笑ましげに頬を緩めては革靴をトン、と固い地面へ。静謐な神社から、朝とはいえざわざわとした活気のある目抜き通りへと周囲は一変。それなりに繁華街と言えるだろう街並みは左右に柳が立ち並び、中心を澄んだ小川が走っている涼し気な様子で。唐突に現れた自分達に構う者は誰もなく、きょろきょろと目当ての店を探しては視線をうろつかせる。傍らの彼女の手は離すことのないままやがて目的の喫茶を見つけると、赤レンガの壁に蔦が伸びる小さなそこを指さして。「ほらあそこだ。どうだ、おひいさまのお気には召したか?」彼女の歩調に合わせるべくゆっくりと足を進め、数歩分の距離へ無事に辿り着いたとすれば木調のドアに掛けられている駒鳥を象ったドアノッカーを鳴らし。出迎えに出て来た店員に目配せをしては目礼のみで挨拶を済ませ、娘の肩を引き寄せようと。案内にシフトした店員の後を追い、緋毛氈の赤が眩しい絨毯を踏みしめながら、アンティーク調の椅子が並ぶ中の一つに腰掛けて。机を間に挟んで椅子は二つ。彼女が腰を落ち着けるのを見守りながら早速とばかりにメニュー表を広げ。彼女の方に向けて写真の場所を示しては)
──どれがいい?クリームソーダは五つあるんだ。赤、緑、青、白、桃色……
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