幹部 2023-08-04 22:34:15 |
通報 |
(問い掛けによって室内には静寂が満ち、相手にしては珍しく回答するでも分からないと口にするでもない沈黙に急かす事はせずただ言葉が続けられるのを待ちながら煙草を吹かし。そうしていれば徐に体を捩り此方へ向く相手に合わせて煙草を指の間に挟み遠ざけ、意外にもすんなりと出てきた答えに驚きと感心の混じる表情で僅かに眉を上げ。果たして教えた事があっただろうか。そんな事を考えているうちに大胆にも膝の上へ乗り上げるような体勢を取るのを咎めずに居れば次の瞬間には普段の相手の振る舞いからは凡そ想像も付かない程繊細な手付きで頬に触れられ、露わになる両の瞳と付け足される言葉に目を細め。時折目にする普段の無邪気な表情とはかけ離れた陶酔感漂う面持ちは決して嫌いでは無く、それが忠誠心につながると思えば尚の事。薬が切れれば反抗的な態度が目立つようにはなるものの、こうして彼を許容し蜜を与え続ければ薬を投与しなくとも従順になる日は来るだろう。他者なら女子供であれ無断で踏み入る事は許さない懐にしなだれ掛かって来る体をそのままにまた一度深く煙草の香りを吸ってから紫煙を吐き出し、その間耳触り良く紡がれる言葉へと意識を向けながら何処か宥めるような手付きでその髪を繰り返し撫で。まだ拙い日本語で伝えられる言葉が途切れると耳元へ唇を寄せ、普段薬漬けにした相手に暗示の如く言い聞かせるのと同じくゆったりと潜めた声で立ち上る紫煙と共に囁き)
…あぁ、そうだ、夜鈴。お前を殺 してやるのも生かしてやるのも、大切にしてやるのも俺の他には居ない。この世界に俺だけだ。
トピック検索 |