─どうにも寝付けなくてね、私の話に付き合っておくれ。 (少し肘掛けから身を起こすだけでも長い髪が床に擦れ、さらさらと小川の流れるような音が鳴る。仕切り越しに従者の跪いた姿を見つめ、ゆったりとそう口に出して微笑んだ。従者の返答は求めないまま、書物の内容や今日の天気、果ては寝所から見える風景の変化まで─何の取り留めもない話を自身の忠実な、新しい従者に聞かせては時折反応を求めるように肘掛けを指先でなぞり)