草紙 2023-07-25 19:05:42 |
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『 はじめに 』
溢れるのは九十九神たちの恨み言。
……あと少し、あと少しで百年に手が届いたものを。
……もう少し、もう少しだけでいい。人の子に愛でられれば。
──おいで人の子。愛してあげよう。その代わり、等価交換だ。
『 世界 』
そこには六つと一つの部屋があった。
潮の匂いが濃い畳に散らばる金属片。
刃のかけらが突き刺さる血腥い和室。
派手に割れた勾玉がいくつも転がる部屋。
色とりどりの糸が異常なほどに張り巡らされた空間。
折れて粉を吹く柘植櫛の歯と硝子玉。
少し焦げ臭く頼りない明かりの明滅する薄闇。
あなたは六つの部屋の内、いずれか一部屋で目覚めるだろう。
彼らはあなたの目覚めを待ち、まるで往年の恋人を眺めるような眼差しで見つめている。
あなたは七夜がすぎる前に、この空間を脱出しなければいけない。
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