隣人 2023-06-23 05:37:13 |
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良い事があった時は感謝して、悪い事が起これば手のひらを返したように罵倒するんだよ。人間なんて。──私は…此処がそんなに悪い所だとは思わない。
( 男は相変わらず温度差という概念を知らぬ様子で上機嫌に言葉を連ねた。それを聴きながら"人間"であるにも関わらず人の道徳を無闇矢鱈に説くと静かに薔薇へと顔を伏せ、この場所で目覚めてまだ十数分しか経っていないにも関わらずお気楽ともとれる返事を。真っ赤な花弁を一枚一枚撫であげる途中、奥へと進ませた手は人を傷付ける目的を持った鋭利な棘に傷付けられ、薄い皮を貫き薔薇と同じ赤い血を滲ませた。その血がぽた、と一滴、二滴、と花弁の上へと落ちれば赤と赤が交わりより一層の鮮やかさをその薔薇に着せるだろうか。 )
──私の血の可能性もあるね。
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