匿名さん 2023-06-18 15:13:18 |
通報 |
〈 碧棺 左馬刻 〉
じゃあ今持ってるの全部お願いします。……あ、支払いは俺で。
( 照れる様子を察した彼女は淡く喜びを抱いてみせ、それが余計に羞恥心、そして一種の敗北感を感じさせる。暫く無言で帽子やサンダルを選ぶ彼女を見ていれば、誰にも聴こえないような霞む声で「 可愛いな 」と呟く。仕草や姿を見て胸の奥底から水のように溢れてきた感情が、言葉となってひらりと顔を覗かしただけで本人は呟いた自覚すらなく。水着に合うように彼女によって選ばれた小物類をまじまじと見れば、普段自分が踏み入れないスペース故か敬語を使いレジにいた店員を呼び。そのまま有無を言わさず会計へと行き、数分で彼女の買い物の支払いをカードを切って終わらせた。包装のために裏へと帰っていった店員の後ろ姿を見送ると、彼女の確かな困惑が顔を見なくても感じられ。財布をしまい、先程までの照れ臭さは何処へやら、大人の男といった余裕を醸し出しながら口角を上げ。 )
いーんだよ、元々誘ったのは俺だろ。カッコつけに付き合ってくれや。
〈 鵲裳 つばさ 〉
ななな、なんで確認するの!?……いいけど。
( 自分の発言を思い切り棚に上げあたふたとしながらも、顔を伏せそのままこくりと頷く。心臓の音がバックミュージックを今にも呑み込みそうな状況で、先に彼の頬へと二本の指を近づけた。線の細いまだ少年の曲線が残る輪郭をなぞる様に摘むと、肌の下に隠れた血の巡りがもたらす心地良い温もりが指から脳へと伝達された。次はそちら、とでも言うかのように目をぎゅっと瞑り右の頬を少し近づける。そうしている間にもカウントは進んでおり、何処か楽しげなアナウンスが彼を焦らせるかの如く一桁の数字を刻み始める。ただその数秒が今の自分にはとてもとても遅く、二人だけで先の見えない宇宙に放り込まれてしまったようであった。 )
トピック検索 |