匿名さん 2023-04-29 15:14:24 |
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ッ、……。
( こちらを品定めをするような彼女の視線に、思わずしゃんと背筋が伸びる。思わずといった様子で2人の歩みを止めてしまったので正直このあとどう切り抜けようだとか、そんなことは全くもって椿の脳内では構築されていなかったのだが。…嗚呼何だか、初めて花魁の元に挨拶に行った日を思い出す。こちらをなんの遠慮もなく、お前にはどんな価値があるのかと上から下まで値踏みをするようなその目。見に覚えがある。椿はそれに思わずにこり、と鮮やかな朱色の唇を美しい形で釣り上げては「 ── …挨拶が遅れて申し訳ございません。わたくし椿と申します。〝旦那様〟に、このように素敵なお店に連れてきて頂き、早速このように袖を通させていただきました。此方は御社の新作だと存じます、恥ずかしながら洋装は初めてですがとても着心地がよく、姿形がなんだか女優さんのようにシャンと伸びるのようで。このような素敵なお洋服を作って下さり感謝いたします。初めて袖を通したお洋服がこちらのお店で幸せです。 」と、丁寧にワンピースの裾を両手で摘んでは軽く膝を折りふわりと挨拶を。……こういう場面では感情的になる女が負けるのが定石だと知っているので、敢えて丁寧に挨拶をする。こんなに大きなお店の主人なのだ、子猫がキャンキャン鳴いたところで痛くも痒くもない。だったら同じ土俵に上がって度胸と美しさで勝つだけだ。こちとら生まれた時から女社会で生きてきたんだもの、そういう意味では場数が違う。 )
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