匿名さん 2023-04-29 15:14:24 |
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( 椿の試着を眺めている間、なんだか己の人形を好きにできているという一種の優越感のようなものを感じてしまい、友人達が楽しんでいる愛玩というものがなんだか分かった気がして。遊郭の花魁達は男どもから貢がれることがステータスだと聞いていたが、まだ売りに出なかった椿はやはり慣れていないらしく、この貢ぎ物達を贅沢だと気が引けているらしい。この試着の中で1番似合っていた黒のワンピースを身につけ、それに合うコーデを施された相手がカクテルハットのレースの奥から心配そうな蘇芳の瞳を向けてくると「 気にしなくていい、これから椿にはその分働いてもらうんだから。 」と、この服の代金分、びしばしと家事をやらせると脅かして。とは言いつつも、ボロボロになるまでこき使うつもりはなく、ただの日常生活の範囲内で家事をやらせるつもりで、今はただレースでも隠しきれないほど、白頬を朱に染めた相手の罪悪感を減らそうとしただけの脅しで。レジスターに表示された、「0」がひぃ、ふぅ、みぃ、よぅ…並んだ金額を顔色ひとつ変えることなく小切手で精算を済ませ、服が詰められた紙袋を2人とも両手で持って店を後にしようとしたその時。 )
『 おや、ナオさんじゃないか! 』
( と背後からハキハキとよく通る女性の声で名前を呼ばれれば、そちらを振り向くと、見るからに気丈そうな、明朗快活そうな綺麗な女性が立っていて。「 あぁ、おハナさん。 」と、お互いに下の名前で呼び合うところを見るとどうやら2人は知り合いらしい。この人の名前は〈龍造寺 華(リュウゾウジ ハナ)〉。この服屋の会長の娘であり、この店舗の主人でもある。2人の親同士が親しい間柄で、自然と子供同士でも繋がりができた仲で、自分の服を仕立てる時にはよく世話になっている。『 いい時に来たねぇ、とびっきりの新作があるンだ。見ていってくンな! 』と、男勝りな口調でぐいぐいと来るその姿勢は商人故か、見る人によっては疑われるような距離感でこちらの手をがしりと握って後にしようとした店内をまた案内しようとして。 )
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