匿名さん 2023-04-29 15:14:24 |
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…おいしい、!直政様が淹れてくださったからですね。
( 頂きます、と一言の後に一口喉を潤した紅茶は、花街でたまに飲める安い紅茶なんかよりもずっと香り深くそれでいて上品な味わいであった。偶に姐さんのお客さんから茶葉を貰えることはあれど、やはり紅茶に慣れ親しんだ…淹れ慣れている人物が淹れるものとは違う味がする。椿はほろりと表情を和らげながら不慣れなティーカップを知識だけで知っているような三本の指で持ちながら美味しいと。これからはもっとたくさんお勉強をしておいしい紅茶を淹れられるようにならなきゃ、とそっと肉桂色の水面に目線を落として。と、ふと思い立ったかのように自分の服を買いに行くという彼の言葉にぱっと蘇芳色の瞳を丸くして。会って間もない自分を身請けしただけでなく、服を買い与えるという目の前の美丈夫にぱちぱちと瞬きを繰り返しては「 ふく、」と、思わずといったように彼の言葉をリフレインして。厭、もちろん大した着物等は持ってきていないし身請けされた女というのはその主人が女に服を買い与えるのが定石ではあるのだが、それでも女性ものの服…洋服にしても和服にしても決して安い物ではない其れらを買いに行こうと言ってくれるその優しい瞳から目が離せずに、彼の夜空色の瞳をただただぼうっと見つめてしまい。 )
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