少年 2023-04-23 20:24:13 |
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ふぅん、狼種の一族……。
( 返ってきた返答には、質問したくせにさほど詮索する気も興味もないのか力なく相槌を打つ。しかし、“他のやつは何処に”と続きを発する前に、相手の妙な間が気になって口を閉じた。
それを聞くのはなんだか野暮な気がするし、なんとなく言いたくなさそうな事だと思ったのだ。自分自身、狼種の一族と聞けば何か心当たりがあった気がするが、今は思い出せない。
そのまま相手の言葉に頷けば、1階へと戻っていく背を見送り、黙ったまま自室へと戻る。
テーブルに本を置き、大きなベッドへ鞄をおろせば、気が抜けたように地面に座り込む。見たことないほど広い天井を仰げば、なんだか無性に泣きたくて仕方が無くなった。
念願の…といえるのかどうか分からないが、獣人の家に転がり込めて、おまけに仕事まで見つけて願ったり叶ったりのはずなのに、半場養われると相違ない立場にある訳で…、おまけにこの家を見ただけで随分と存在の違いを感じる。所詮は彼のような強い存在に縋らないと平穏にも生活できない。
有り難さや悔しさと情けなさで、そんなしょうもないかき乱れた感情になれば、静かに涙を流しながら立ち上がり、少ない荷物を片付け始める。我ながら情緒が大波状態にあるらしい。
夕食までゆっくりしていいと彼は言っていたが、片付けもすぐに終了するし、目元を乱暴に拭えば、気を取り直して屋敷内を散策でもしようか。)
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