主 2023-03-12 23:09:40 |
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(喫煙所にて、短くなった煙草を灰皿へと捨てる。相手から入っていた連絡に今更ながらに気付いては溜息を溢す。カツカツとヒールの音を鳴らしながら訓練場へと向かい中へと入れば術を唱えている様子の相手の姿。)
「日影も容赦無いね。あのおっさんが本当に奥さんと一緒になる事…死を選んだら本当に戻って来れないのを分かってやってるんだから。…あー怖い怖い。」
(面接だからと格好付けたスーツは非常に疲れるしヒールは痛い。慣れない事をするもんじゃないなと思いながら、目を瞑ったまま術を唱え続ける相手に額に自分の額をつける。)
「それじゃ、お邪魔します。」
(一瞬の浮遊感と共に目を開けば一面に広がる彼岸花に圧倒される。中央には抱き合う二人の姿。
完璧にお邪魔虫じゃん、なんて悪態付きながら術の力で制服を纏いながら二人の元へ歩みを進める。
自分に気付いた二人がこちらに向き直る。)
「初めまして。ご主人からの依頼?を承った者です。」
『…依頼?…何の事?ねぇ貴方、』
『豊子、良いんだ。気にするな。そして待たせて悪かった。やっとお前の所に行けるんだ。』
(不安そうに眉を下げる女性。表情を変えないまま刀を構えれば男性、元い部長は優しい表情のまま瞳を閉じる。)
「では、現世との魂の境目を断ち切ります。…痛いのは一瞬なのでご心配なさらず。」
『…!!!待って!!!貴方、何をするつもりなの!!!』
「ご主人のご希望通り、奥様の元へと、」
『駄目よ!!!そんなの駄目!!!!!私はこんなの望んで無いわ!!!』
(女性の言葉に耳を貸す事も無く部長に斬りかかる。………も、その刹那。鋭い光に目が眩み、強制的に術は遮断され部長と自分の“肉体”は訓練場に戻されてしまって。
何事かと目を見開く相手に部長は掴み掛かる。)
『どう言う事だ!何故…何故私は生きている!!!』
「-もうやめて。貴方。-」
(いつもの自分の気怠げな様子の声色とは違うはっきりとした声が響き渡る。)
「-貴方の気持ちは嬉しい。でも、望んで無いの。…生きて、欲しいのよ。-」
『豊子、なのか…。』
「-ゆっくり、こちらに来てください。私が知らなかった新しい日常の話を土産に。ずっと見ていますから。…ほら私お友達がとっても多かったでしょう?あっちで貴方の事をたくさん自慢する予定なの。-」
『…何を、言っているんだ。俺は自慢できる様な夫じゃ、』
「-本当は、死ぬ為にここに来たんじゃ無いでしょう。ずっと見ていたのよ。これまでも。皆を守るヒーローが夫だなんて、自慢してもしたりないわ。-」
(涙を溢す部長の頬を撫でた後、“自分”は相手に向き直る。)
「-ごめんなさいね。お嫁さんの身体を借りてしまって。若い子の服ってなんだか恥ずかしいわ。足が寒いんだもの。-」
(悪戯っぽく笑った“自分”はその一言を最後に気絶するように倒れ込んで。)
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