主 2023-03-12 23:09:40 |
通報 |
(理沙と守の初舞台であった日の翌日。珍しく面接が入っている事をタブレットで確認しては歓喜の声を上げるもWEB履歴書を見て呆然とする。年齢は60代。WEB履歴書という物に慣れていない様子が文面からひしひしと伝わって来る。概要欄の所には“面接の際には手書きの履歴書を持参致します。”と丁寧に記載されていた。)
「…どんな人なんだろう。」
(ポツリと独り言を溢す。記載されている電話番号へと連絡を入れ日程の調整を行おうとしたものの電話の向こうの彼は“いつでも大丈夫。”との事。話は早い方が良いと本日の日程で問い合わせて見れば今から向かう旨を伝えられ、司令室のソファーで昼寝をしている相手を叩き起こしに行き。)
(昼食を済ませ面接の時間が近付いて来た頃、会議室にて準備をして入れば玄関のセンサーが反応すると共にインターホンが鳴りテレビモニターに年配の男性が映り込む。会議室のロックを明け、エレベーターで上がって来た男性を玄関前で待っていれば深々とお辞儀をされる。)
『先程連絡をさせて頂いた者です。』
(仕立ての良いスーツ、姿勢、佇まい、年齢差無視に紡がれる綺麗な敬語、どれを取っても貫禄を感じる。「初めまして。急な日程でしたのにご対応頂きありがとうございます。中へお入りください。」と男性を会議室に案内すれば相手がテーブルを挟んだ席に立っており、男性は再び丁寧な挨拶をしていて。)
「まず、志望動機をお聞かせ頂いても良いでしょうか。」
『…先日、不思議な事がありました。定年退職を迎え、最後の出勤だった日の事です。部下達に花束を貰い、穏やかに退職の日を迎えようとしていたその日に禍憑鬼が現れました。避難司令に遅れた部下がいましてね。若い命は残さなくてはと、私が囮になろうとしました。』
「…。」
『実は、二年前に妻を亡くしていましてね。恐れも無く、受け入れようと思っていたのです。どういう事か全くわからないんですが、何故か…禍憑鬼が消失しまして。生き延びてしまったという訳です。…私は仕事人間で、退職したら妻とやろうとしていた事が沢山ありました。妻も仕事も無くなった今、何か私にでもできる事があるのでは無いかと、』
「ここがどういう会社か分かっていますか?」
『存じてます。』
「確かに、貴方には自分自身で気付かない内に何らかの力が発現したのかもしれない。部下を守る姿も上司の鏡。素晴らしい生き様です。………ですが気になる事が一点。貴方からはどこか、生きる事を諦めているような様子が伺えます。」
(男性は表情を変えないまま自分を見詰める。眼鏡越しの男性の瞳が全てを物語っていた。)
「命を守る組織です。自分の命も守らないといけません。約束できますか。」
(男性は答えない。タブレットを置いたまま立ち上がれば、先程男性から受け取っていた履歴書に視線を向ける。大手企業の部長。男性の佇まいからも納得がいった。「コーヒー、淹れ直してくるね。」と相手に告げれば相手と男性を二人残し給湯室へと向かって。)
トピック検索 |