主 2023-03-12 23:09:40 |
通報 |
(理沙の両親と話しをしてかれこれ数時間が経った。これは親としての話し合いだと思う。MEFの現状、理沙が能力の発言に至った経緯など答えられる質問には全て答えた。)
「と、まァこんなとこですかね。なので本日はわざわざお越し頂いたというわけです。」
『…。』
(話を聞いた上で理沙の両親は黙って俯いていた。傍で話していた燈が『日影。』と合図してくるのに対して「分かってるよ。」と答えた。そして)
「では、こちらからも一つ質問をしても?」
『…なんでしょうか。』
「今日の理沙を見ていてどうでしたか?」
(その質問に両親は顔をゆっくり上げ、少し震えながら消え入りそうな声で)
『…あんなに楽しそうな娘は初めてみましたよ…』
(父親が続ける。)
『娘が生まれたとき、会社を立ち上げたばかりでうまくいかず翻弄していました。…だが、この子は絶対に幸せにしてやりたいと仕事に打ち込みました。妻も当時モデル業に就いていましたが娘を身籠ったとき・・・。』
『あなた…。そう、あの子にはずっとキラキラしてほしかった。なのに私たちは娘の為だからと託けて結局あの子の…苦しみや悲しみから目を背けてしまって、本当にあの子が欲しかったものを何一つあげられていなかったんです…あの子はずっと、私たちを見てくれていたのに・・・』
『だが、私たちは理沙を心から愛しているんだ…これだけは本当なんだ…』
(理沙の両親は自責の念からか子供の前では絶対に見えせないであろう涙を流していた。)
(「そうですか、お話頂きありがとうございました。」と返したところで親二人のお涙頂戴に飽きていた燈が『だってよ。もう入っといで。』と扉に言葉を投げた。)
『…もう。そこは気付いてても言わないでよ。燈のバカァ』
(扉の向こうから涙と鼻水をボロボロ垂らしながら理沙が入ってきた。久しぶりに親に会った子供のようなそんな顔で。)
『パパ、ママ。ごめんなさい。私…わたし…。』
『謝るのは私たちの方よ。ああ、理沙…。本当に…ごめんなさい。』
『理沙。今まで本当にすまなかった。私は父親としてお前を…本当にすまない…』
「積もる話は後にしてくれ。これが最も重要な話だ。理沙。お前は一つ試練を超えた。この先どうしたい。」
(これは強制ではない。当初とは違い心身ともに成長した理沙には選択肢がいくつも用意されている。それを自分たちが潰す訳にはいかない。)
「能力があるからと言って必ずしも戦いの中に身を置く必要なんてない。」
(すると子供のように泣きじゃくっていた顔を袖で拭うとこちらに向かい初めて会った時と同じ眼で)
『私は戦う。パパとママが私を守ってくれてたんだから今度は私が守る番!!』
『私たちからもどうか…。もうこの子の進む道を阻みたくないんです。その為なら我が社は協力を惜しみません。』
「そうか。分かった。だが、学生の本文はしっかり果たせ。モデルの仕事もだ。これからはもっと厳しい状況になるぞ。」
『…もう決めたことッ!』
(こりゃ燈の影響かな。)
「ならOkだ。ようこそ我が《対マガツキ専攻対策結社【エモーショナルフォクシー】》通称MEFへ」
「はああ。仮採用書を正式採用書に直さないとなぁ。めんどくせ。」
(『このままではまずい。君は逃げなさい。私が囮になろう。』)
(『ですが【部長】!』)
(『君はまだ若いんだッこんな老いぼれ置いていけ!』)
(『‥‥わかりました…』)
(『あぁ・・。これでやっとお前のところに逝けるな。…豊子。』)
(刹那その中年の男性の手から白い光が禍憑鬼に放たれる。禍憑鬼は消えた。残されたのは訳も分からず生き延びてしまった【部長】と空虚な静けさだった。)
トピック検索 |