主 2023-03-12 23:09:40 |
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(いきなりの少女の言葉に体の制御が効かなくなったと思えば、脳天に直撃した激痛で元に戻った。)
「これは…。」
(目の前ではその当人が燈にしこたま説教を喰らっているではないか)
「Oh…。」
(なにやら大蛇が暴れまわっていた獲物を丸呑みにした後の静寂のようなものがそこにはあったので「ゴホン」とわざとらしい咳払いをしては燈と共に少女に向き直る。そして禍憑鬼の実態やそれを討伐する狐緋人という存在いる事、我が国がその状況において圧倒的な人手不足であることなどを少女に話した。大半。燈が。うん。多分こういうのって俺の仕事なんだろうな。)
「さて、ここまで話したのは燈が声を掛けた人物に対しての信頼だ。その信頼に値する自己紹介をしてくれるかな。」
(すると少女が仕方なくといった感じでつらつらと話し始めた。)
『・・リサ。西園寺リサ。三日月学園2年。バイトでモデルをやってるわ。両親は外資系の仕事で家になんか帰ってこない…。誰も…誰も本当の私を知らない。』
(リサの整った顔からは計り知れない怒りや悲しみがポタポタと溢れ出した。)
「そうか。それでその力とやらに目覚めたのはいつだ?」
『分からない。でもモデルの撮影中、私の意見が全て採用になったことがあったの。たかがバイトの素人の私の意見がプロに通る訳ないじゃない。多分そのあたりからよ。』
「うん。ちなみにその数日前あたりから強い感情や衝動に駆られたことはあったかい?」
(するとリサは数秒口を噤んだあと強張った表情と声色で話始めた。)
『私、学校では高飛車だっていじめられてるのよ。別にそんなことはどうだっていい。所詮は他人。・・・でも家族は違うじゃない。娘が学校でいじめられてるのも知らずにずっと放置。お母さんもお父さんも・・・。まるで私が見えてなかった。だから見てほしかった・・・』
「そうか、分かった。君のその力は君自身の欲求が強まって心門が少し開いたんだ。だから力は発動できても微弱で、強い衝撃や意思で簡単に解除できてしまう。だが君の感情自体が高ぶると逆に制御もきかない程力が強まってしまう。そうだろ?」
『今の話でそこまで…。』
「いや。君のその力があればご両親を振り向かせるのなんて簡単だろう?なのに君はそれをしなかった。それは君の感情一つでその力が善にも悪にもなるって分かってるからだろ?それに学校でのいじめも感情を表に出さないように努めているからなんじゃないか?」
『‥‥そうね。正解よ。』
「だからこそ、君にはウチで働いてもらいたい。」
『いやよ。だから言ったじゃない。私には何もないのよ。』
(確かにリサの境遇なら誰もが悲観という感情に走るだろう。しょうがないと思った瞬間に燈が口を開いた。)
『さっきから聞いてたらよぉ。アンタの意思がどこにもない。大体、分かってほしいならちゃんと動いたのかよ。見てもらいたいならちゃんと見せたのかよ。そもそも、そんな誰かに頼りっきりで自分には何にもないなんて自分を推し量ってんじゃねよ。それだったらさっきの私に啖呵切ってきた威勢のいいクソガキの方がまだマシだわ。』
(珍しく燈が真剣だ。だが言い方や表情にちゃんと愛がある。これが燈。俺の自慢の妻なのだ。)
『‥‥でもッ!』
『でももくそもねぇんだよ!アンタがどうしたいかだ!』
(燈の言葉にリサは唇を噛みしめて拳を握りしめ、俺たちに向き直って涙を拭きながら)
『やるわッ・・・やってやるわよ!』
「そうか、ありがとう。」
『それで何をすればいいのかしら。』
「具体的な話は後日正式な儀式を踏まえて教えるがとりあえずは実戦にむけての戦闘訓練と簡単な事務作業、実地研修は燈に同行してくれ。」
(すげえ嫌そうな顔。どっちも。)
「えー。とりあえずは君のその力【魅了の世界】《ワールドエンチャント》の戦術的使用の制御訓練だな。」
『わーるど・・・え、なに?』
『こいつ厨二病なのよ。』
(なんか、仲良くやれそうじゃん?)
「言い忘れてたけど、狐緋人という存在は他に知られてはいけない。例えそれが家族であってもね。これだけは今日から守ってね。」
『分かったわ。』
(そう言うとリサを帰路につかせた。そして)
「燈、ありがとうね。さっきの言葉響いたよ。」
『別にぃ~』
(窓辺で二人でタバコに火をつけ少女が小さくなっていくのを二人で見ている)
『お待たせしました!』
(守が会議室に入ってきた。)
「おう。お疲れ、守に大事な話があってな?」
『はい!何でしょう??』
「お前には【ツ―マンセル】を組んでもらう。」
『・・・?誰とですか?』
「J・K【女子高生】」
『・・・。ッええええええええええ???!!!』
(守の声が会議室中に響いて。)
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